同窓会

会長コラム 第一報 2022.2.1

同窓会はタイムマシン
~ 過去、現在、未来の「同窓会的」相互作用 ~

 同窓会はタイムマシンだ、などと言うと、何を馬鹿なことをと思われるかも知れない。もちろんSFに登場するタイムマシンとは全く別の話なので、そこはご理解頂きたい。多くの方には、同級生と語り合って昔を懐かしむことを言っているのだろう、と思って頂けると思うが、まさにそれが同窓会のタイムマシン的機能のひとつである。皆で集まり、かつて過ごした学校生活やクラブ活動、また当時の日々の生活などをありありと思い出すという点では、過去や未来を覗き見るタイムスコープとでも呼んだ方が適切かもしれないが、ここでは分かりやすさを優先して、タイムマシンと呼んでみた。

 同級生に会い、昔話に花を咲かせれば、あの時はこうだった、誰それがどうだったなどと話はつきない。「夏の集い」や「東京の集い」のお手伝いをしていると、「卒業後初めて30数年ぶりに会った」などと言うことは珍しくない。「変わってないな」「老けたな」等々と言いながら、話しは瞬時に中高生時代にさかのぼる。気持ちも若返ろうというものである。ご高齢でもお元気な恩師のお顔を拝見し、授業中早弁してました、などという懺悔もある。

 それだけではなく、今どうしてる?という話題にも花が咲く。卒業後に歩んできた道、とんでもない体験やこれからの人生設計など、話題は尽きない。その中には、探していた良いお医者様を紹介してもらえた、仕事のパートナーが見つかりそうだなど、これから役立ちそうな情報や出会い、発見があるかも知れない。未来に向かう新しいつながりである。

 毎年迎える新しい卒業生、そして未来の同窓生である洛星の現役生にとって、大先輩である我々同窓生の姿や活躍は、大きな刺激にまた目標になるのではないだろうか。いやそう願いたい。私が生徒だった頃は今に比べればまだまだ先輩の数は少なかったが、それでも先輩の活躍が話題になったりすると、少し鼻が高い思いをしたものである。中高生時代に自分の将来のイメージを持つのはなかなか難しいかも知れないが、様々な先輩の活躍が、将来はこんな風に生きる方法もあるな、こんな職業、こんな活躍の仕方があるのだな、と将来の姿をスコープし、いろいろと思いを巡らせる契機になるように思う。

 社会に出て、様々な経験を積んだ上でふと振り返ってみると、洛星時代に学んだことを結構思い出すものである。大学で学んだ専門知識や経験は、直接仕事につながることが多いが、人間関係や社会とのかかわり、趣味や文化への関心など、中高時代の経験や学びが端緒になっていることも多いのではないだろうか。一方、VUCA(注)と言われる現代社会に生きていると、職業に直結する専門知識だけでなく、広い関心や俯瞰的な視点、文化的素養、多様な感受性、発見的な洞察などが重要だと思い知らされることは多い。SDGsに象徴されるような様々な社会課題の解決も不可欠になっている。そのような中、様々な経験をし、多岐にわたる課題に直面している我々から見て、10年後、20年後に社会の中軸となる今の中高生に、今学び身に着けておいておいて欲しいこと、将来必要になるであろう素養は何か。同窓生の皆さんの多様な経験から、様々な形で伝えられることがあるのではないかと思う。今と未来を結び付けるそのような活動も同窓会の持つ未来志向の一機能と考える。

 タイムマシンなどと飛んだタイトルにはしたが、中学入学から生涯にわたって伸びている「洛星タイムライン」とでも呼べる時間軸の上で、同時刻を生きている同期、ちょっと離れた先輩後輩、将来を担う今の現役生など、洛星タイムライン上にいる全ての同窓生の間で、会話があり、情報の共有があり、共同作業があり、また質問とアドバイスがある、そのような関係が「同窓会」という一つの場、タイムマシンではないかと考えている。

   2022.2.1

ヴィアトール学園洛星同窓会
会長 吉岡 正壱郎

(注)VUCA:Volatility, Uncertainty, Complexity, Ambiguityの略。
   予測不能な現代社会を象徴する語とされる。