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同窓生インタビュー 多士済々な洛星出身者をご紹介します

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14期生 桑原 真(くわはら まこと)氏

写真桑原氏ソルベイグループ日本代表(兼ソルベイジャパン株式会社 代表取締役社長) 桑原(くわはら) (まこと) 氏14期生) に伺いました.

― 本日は,お忙しいところお時間を頂き,誠にありがとうございました.友人からソルベイ法といえば,化学の分野で非常に有名な方法だよ,と聞かされました.会社について,ご紹介いただけますか

桑原氏    ソルベイ法は,Ernest Solvayが開発したソーダ灰(炭酸ソーダ)の合成法です.ガラスや洗剤の原料として使われます.彼は,ベルギー人の化学者で,ソルベイ社もベルギーが発祥の会社です.1863年に設立されました.1863年と言えば,文久三年 新選組の結成と同じ年です.昨年で創業150年を迎えました.この部屋の廊下にSolvayの写真をいろいろ飾っています.Solvayは,化学だけでなく,様々なこともやられたようです.その一つに物理学会の開催があります.ここには,Solvayが企画した物理学会の写真もあります.ご覧になると,若いころのEinsteinやM. Curieが参加しているのが確認できますよ.

ソルベイ社は,特殊化学品製造会社です.創業当時のソーダ灰の仕事もしていますが,会社は変革していかないといけない,という考えから,米国やフランスやイタリアの会社らと買収・事業交換などを進めて世界規模の会社となっています.物理会議の写真

日本での事業はローディアジャパンという親会社がフランスの会社でしたが,ソルベイ社との買収統合を行い,現在に至っています.

 

― 合併となれば,ソルベイ社の人がたくさん入ってこられたのでしょうか.

桑原氏    ソルベイ社が吸収したような印象を持たれるかもしれませんが,それは間違いです.この東京オフィスには110人が勤務していますが,ほとんどが日本人です.ベルギー人とフランス人のハーフの若者二人が勤務しているだけで,ベルギーや欧米からの駐在員は在籍していません.ローディアジャパンが,そのままソルベイジャパンになった感じです.ソルベイ社自体が,多様性のある会社であり,いろいろな文化・慣習を受け入れる素地があるのだと思います.ベルギーや欧米がそうなのかもしれません.日本で活用できる人材がいれば,そのまま人材ごと受け入れる.任せる,という感覚なのだと思います.

 

― 会社が変わるということに,抵抗はなかったでしょうか.エネルギーのいることだと思います.

桑原氏    確かに,日本の社会では抵抗があるのかもしれません.最近では,そうでもないかもしれませんが,日本人は,東大や京大に進学して,名のある会社に勤務する.そこに安心感を求めていたのかもしれません.個人というより社会の安心なのかもしれません.この会社には,ベルギーやフランスの風潮があります.個人主義です.私自身は,大学を卒業して商社に進みました.この商社での経験が大きかったし,今でも根底にあります.特に,アメリカに8年いましたが,その時いろいろな人と知り合ったのは,貴重な財産です.アメリカにはいろいろな人がいます.ユダヤ人の人と知り合ったのは,面白かった.結局,日本のスタンダードとは?ということを考えさせられました.日本のスタンダードに新たな挑戦,という気持ちが芽生えました.そういった意味で,会社の合併・統合も私自身には自然な感じでした.

また,この会社自身は,出身国を問わない,いろいろな多様性を求める,と言った風土があります.適材をその国で選ぶ.人材がクロスしないと発展はないでしょうし,それが変化できる理由だと思います.

 

― 英会話学校の宣伝の影響のせいかもしれませんが,これからの会社は,英語が公用語となっていくのでしょうか?

桑原氏    ここは,日本語ですよ.普段は東京本社の110人のスタッフのうち,ほとんどが日本人なのに,英語でやっても変でしょう.ただ,当たり前だと思いますが,ミーティングで一人でも外国人,日本語のできない人間がいれば,英語に変わります.ベルギーやフランスが本拠なので,英語でなくフランス語がいいのかもしれませんが,そこはやはり共通の言葉は英語になります.

 

― 現在,子供のころ(小学生)から英語教育をする傾向になりつつあります.英語でディベートできるように,という目標なのでしょう.英語は必要ですよね.

桑原氏    確かに,幼いころから英語を勉強するのは大切だと思います.ただ,日本語で十分な議論ができないのに,英語だけが出来ても仕方がないと思います.日本語でロジカルに説明できないのに,それを英語でやっても仕方がないような気がします.インタビュー中の桑原氏

アメリカやフランスに駐在した時の印象ですが,一般論で発言すると「何言っているの?」という雰囲気になります.一般論と自分の意見を明確に言い分けることが必要で,それは幼いころから訓練をされていると思います.アメリカに駐在していた時,子供たちが小学校や幼稚園でShow and Tellの時間がありました.自分をプレゼンする時間.自分はどうなのか,みんなとどう違うのか,を幼いころから自分の言葉で説明する.多分,フランスにもあると思います.違いを理解することは,自分を理解することになります.また,違いが理解できれば多様性の理解になる.先程,「会社が変わって抵抗が」という質問を受けましたが,多様性への理解があれば抵抗はないと思います.また,多様性ということが新たなエネルギーになると思います.

ソルベイ社は,グローバルな化学会社です.日本の雰囲気とは違います.主な事業は,フランス,ベルギー,アメリカ,インド,タイ、中国 ブラジルの7か国でなされていますが,全世界55箇所に拠点を持っていますので結果としていろいろな人種,様々な文化が入り混じっています.英語力もさることながら,無理にでもテンションをあげて議論しないと,フランス人ほか議論好きの国の人たちばかりですので社内で意見が通りません.テンションが低いとちょっとね・・・・・・.

 

― 会社は,日本的というよりも欧米的なのですね.

桑原氏    この会社の特徴というか私の希望は,「自由にやって欲しい」と「女性の活躍」です.これは,欧米,ベルギーの考え方とマッチングするもだと思っています.各自が目標を定めて,それぞれ仕事をすることを希望しています.後でオフィスを見てもらえばわかると思いますが,既に18時を過ぎているのでほとんどのスタッフは帰宅しています.17:30にはみんな帰っていきます.朝は,適当に.完全なフレックスです.各自のライフスタイルに合わせた自由な働き方を推奨しています.もちろん,結果は求めます.成果は,Webに自分で登録する.それを多くのスタッフが共有・確認できる.透明性は確保しながら,ごまかしのきかないものとなっています.

また,110人のスタッフの半分が女性です.総務,法務 財務といった管理部門のほとんどが女性のマネージャーです.女性の営業担当も増えてきています.管理職の女性比率は,1/3です.働くお母さんが多いのが実態です.図らずも安倍政権の掲げる女性の活躍を先取りしている状況です.

 

― 商社での駐在経験が大きかったようですが.

桑原氏    私は京都の呉服屋の生まれです.大学まで京都ですから,京都しか知らなかった.親戚も京都でした.中学で洛星に行きましたが,それこそ「カトリックとはなんだ?」みたいな感じでした.

大学も工学部でした.当時,工学部から商社に勤める人間は,ほとんどいませんでした.両親からすると,「京都にいすぎたので子供ぐらいは外に行きなさい」とう感じでした.後押しをされたような気がします.

先にも述べましたが,商社時代にアメリカに駐在したことは財産です.本当に,多様性ということを実感しました.仕事の関係もあって40州は行きました.西海岸や東海岸の名の知れたとことは皆さんもご存知ですが,アメリカの中部には,様々な州があって,本当にいろいろでした.

 

― 洛星時代は,いかがでしたでしょうか.

桑原氏    バトミントン部と放送部に参加していました.あまり長続きしなかった.同期の玉木君がバトミントン部にいました.彼はうまかった.私自身は,基本的に暗い生徒だった.

 

― うそでしょう?

桑原氏    暗いというと語弊があるかな.大人しい生徒だったのかな.年とともに変わっていくけど,すこし洛星の刺激的な部分に気後れしていたような気がします.下京の呉服屋に生まれました.街並みは,火をつければ燃えるような木造の家々です.そこで育った子供が,洛星のような個性的な学校に行ったのですから・・・・・.タブローは経験できませんでしたが,いろいろな新しいものに触れることが出来ました.オーケストラもすごかったな.中学校にオーケストラがあるのは驚かされた.

 

― キリスト教に触れるということは,どうでした.どうして洛星に進学されたのですか.

桑原氏    結局,商社に勤めて,海外に長く駐在することになりましたが,中学・高校時代にキリスト教に触れていたので,海外での生活になじみやすかったと思います.洛星に行くまでは,外国人に触れることはなかった.だから,神父さんが来て授業をするのは,新鮮で異文化と触れる感じがありました.多分,洛星に行かなかったら,あの時代にそんな体験はできなかっただろうと思います.人生で最初に異文化に触れる体験でした.

当時は,京都は革新府政・市政の時代.学区があって,公立の中学・高校の選択肢がなかった.自由がなかった.学区縛りからの脱出は,唯一私学に進学することだった.同志社や立命もあったが,親が「洛星に行けば」ということで進学しました.姉も聖母で,親としても異文化に触れさせておきたかったのでは・・・・・.

ソルベイの前身のローディア時代に,パリとリオンに1年間滞在した.ローディア社はリオンが創業の地です.ヴィアトール会がリオンだから,何かの縁を感じます.在学中,モントリオールにイメージが強かったので,残念ながらリオン滞在中はそれを意識しませんでした.

中学・高校当時,神父さんのフランス語なまりの英語が思い出されます.今の会社もフランス語圏の人が多いので,懐かしさを感じます.

 

― 洛星で得られたものは多かったのですね.

桑原氏    中学に入ったら,高校生も一緒にいる.大人だなと思いました.6年間いると,多くの先輩や後輩に知り合えたのも大きかった.

大学卒業して,住友商事に19年半在籍しました.京都・洛星・京大・住友は多いのでは.一般的なパターンかな.住友商事にもたくさんの洛星の人がおられましたよ.新入社員時代に研修を受けたのが,1期の野村さんでした.4期の加太さんは米国駐在時の直属の上司,11期の加藤さんが法務におられました.12期の三浦さんは人事,19期の前田さんにはソウルでお世話になりました.21期に安達さんがおられたな.住友商事に入社すると人事から,「出身大学も出身高校も忘れなさい.」と言われます.住友商事の人事の方針だと思います.それでも,住友商事の洛星の同窓会をニューヨークでやりました.人事の三浦さんが音頭をとって開催されました.インタビュー中の桑原氏

また,化学業界にも洛星卒業生は多いですよ.仕入れ先に行って出会った人が,あとで「洛星の先輩・後輩だったのか.」という人はいました.大学時代,吉田神社の鳥居のそばの雀荘にしょっちゅう行っていたのですが,そこで麻雀をした人と偶然仕事で会うこともありました.「おお!」という感じですね.

多くの人と出会えたのは,よかったですね.

― 本日はお忙しいところ,誠にありがとうございました.

 

インタビュー中,「中学・高校時代は暗かった」との話がありましたが,どこが?エネルギッシュで,さすが世界を相手に仕事をされてきた人です.熱いものが感じられました.益々のご活躍を祈念しております.

(2014, 12, 16  ソルベイジャパン東京本社会議室にて)

 

桑原 真 氏 略歴

14期生

1976.3. 京都大学工学部合成化学工学科卒業
1976.4. 住友商事株式会社入社
1995.10. ローディアジャパン入社
2011.4. ローディアジャパン株式会社(現ソルベイジャパン) 代表取締役社長 兼グループ日本代表
  現在に至る.

化学工業日報での桑原氏の紹介記事

 

SOLVAY社概要 (2013年)

本社 ブラッセル 売上 €12.4 Billion 従業員 29千人

主要取扱品目  高機能性樹脂、電子・電気半導体薬品、電池材料、香料食品原料、界面活性剤 レアーアース その他工業用無機薬品など

 

Solvay Group 日本 (連結)

本社 東京 売上 450億円 従業員160人

 

ソルベイジャパン、 ソルベイ日華、Solvay Specialty Polymers Japan,日本ソルベイ及び阿南化成の5社で構成